花を矯める 


花屋の一角に
紅葉しているナナカマドの大枝がありました。
北海道か、東北か、
いずれにしても北からやってきたものなのでしょう。
私の身長程もある大枝です。
初秋に出版される紙面の撮影にでも使われるのでしょうか、
なんとも気の早いことです。

それを見ていて、
この枝は大きな幹から横に出て伸びた脇枝なのだと
無意識のうちに見ていることに気が付きました。

横に出ていた枝を
器にまっすぐ立てて入れることを想像してみてください。
自然の中にあった時と
枝の向きを大きく変えるという事は
太陽の光をなるべく享受出来るように生えていた葉っぱに
無理な姿勢を取らせざるを得ないわけで、
そのような花は
見ていて心が落ち着きません。

天に向かってまっすぐ生えていた物ならば
器にすとんとまっすぐ放つだけで
生えていた時そのままの姿に収まってくれます。

はじめに記した大枝も、
自然にあった時と同じように
横に張りだせば
見ていて違和感がないわけで、
草木を器に入れる時は
まずその草木の出自を見極めた上で
最低限の手の加え方で
元々の生えていた角度に近づけることが必要です。

この大枝の場合はたとえば
枝を元々生えていたように横に持ち、
枝の足元を地面に向かってぎゅっと曲げることで
元の角度に近づきます。
この曲げる手法を花の世界では
「矯める(ためる)」といます。

「矯める」という言葉は
他では使うことがあまりないように思いますので
辞書でひいてみました。

①木・竹・枝などを,曲げたりまっすぐにして形を整える
②悪い性質やくせなどを直す。矯正する
③目をすえて見る。じっと見る
④弓・鉄砲で,ねらいをつける

日常生活ではむしろ
似たような意味で使うのは
撓む(たわむ)という言葉です。
これは撓う(しなう)とも読みます。

「撓む」(たわむ)
1、固い棒状・板状のものが、加えられた強い力によってそり曲がった形になる。しなう。
2、心が屈する。疲れる。たゆむ。

なんとなく
イメージが掴んで頂けるかと思います。


花をためる方法には
潰し矯め、折り矯めなど
様々あります。
植物によっては
矯められることに向いていない物もありますので
万能な手法ではありませんが、
使おうとする器と草木との組み合わせで
様々に工夫できます。

なげいれの
空気の澄んだ花を入れたい私にとっては
矯める手法は
草木の枝の矯正というよりも
上記のような枝の生付(ショウツキ)を正す時か
水際よりも下の花留めに
必要とすることが多いです。

水際から上の、草木の上の部分を
目ではっきりと「人が手を加えた」とわかる程ためる場合、
「つのを矯ためて牛を殺す」
ということわざそのままになってしまう危険が
とても大きいように思います。
(*ある対象物に対し、手を加え過ぎて、
結果的に全体を駄目にしてしまう例のこと)

「枝を矯めて花を散らす」とも言うように、
小さな欠点を矯正して、
かえって重要な部分や全体を損なってしまう可能性も多いので、
水際より上の部分をためる際は
不必要に手を加えることのないように
気を付けなくてはなりません。


20170623.jpg


花:沼酢木 山紫陽花 山蛍袋 海老蔓 糸薄
器:唐物手付籠

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