雲と風の通り道


強風の本日。

庭に出たところ
沢山の花が散り、折れていたので
葉の大きな白雲木(ハクウンボク)を
家に持ち入りました。


麻佐吉久登 伊比氐之物能乎 白雲尓 多知多奈妣久登 伎氣婆可奈思物

まさきくと いひてしものを しろくもに たちたなびくと きけばかなしも  

  万葉集 大伴家持


「まさきく」は「真幸く」と書きます。

胸を打つ言葉です。
どんな相手になら
わたしはこの言葉を使うだろう、と
考えてしまいます。

天皇からの命を受け、
越中に赴任して間もない家持の元に
たった一人の弟の訃報が届きました。
父親を早くに失くしていた家持にとって
弟の死は
どれほどの痛みであったことでしょうか。

お互いの健康と幸せを祈り
元気で、と言い別れたその弟が
白雲になり
たなびいて逝ってしまったと聞けば
悲しまずにいられようか…と
万感の思いが込められています。

この絞り込まれた言葉数に現れる
家持の思いを
日本の人は
すっと寄り添って共感し、
理解します。
まるで、詳しく述べれば述べる程
悲しさが偽物のように見えるとでも言わんばかりに
少ない言葉に思いは凝縮されています。

雲と言えば白雲木は、その花が
雲がたなびいているように咲くことから
名付けられたそうです。
井の頭通りの永福あたりで
街路樹に植えられていますが、
2~30cmの花の固まりが
ふあんふあんと咲いている様を遠目に見ると、
よくも白雲になぞらえたものだと
名付け主の感性に感心します。

しかし、実際に折れた枝を見てみると
花だけではなくその大きな葉も、
雲が風をはらんでいるがごとき風情です。
葉の付き方が
枝の間の風の通り道を示しています。

家持の弟に思いを馳せ、
骨壺に入れてみました。


20160429.jpg



花: ハクウンボク
器: 篠岡 四耳壺(平安)



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