唐糸草


10年程前の
梅雨も開けようという頃。

神楽坂を下り
毘沙門天の前を通りかかった際、
門前の露店の花屋さんのバケツに
どっさりと入った花に目が留まり、
思わず足を止めました。

紫がかった濃い桃色の
ふわふわとしたねこじゃらしのようなポンポンが
10cmほども垂れ下がった花穂は、
思わずそっと触りたくなるほど
ふわふわとしています。
葉っぱはワレモコウに似て
美しい緑色です。

その花は「唐糸草(カライトソウ)」と言って、
唐の国(中国)から日本にもたらされた
絹糸の束のありさまに似ていることに由来して
付けられた名前だと教わりました。

すっくと伸びあがった茎の先に
たらんと垂れ下がった様子が美しい花ですが、
つぼみのきゅっと引き締まった姿も素敵です。

あれからカライトソウを目にすると
もうすぐ夏本番だなぁと思うようになりました。


庭の唐糸草は
もう少し待てば開花することはわかっているものの
今もとても美しい姿です。
切ろうかどうしようか
腕組みをして考えました。

このような時、
「花を切らないで、
美しい姿をそのまま見るわけにはいかないの?」
と問いかけられたことを思い出します。


自然に与えられた寿命を朽ちるまで全うすることが
何よりも幸いなことなのか。

美しい花を部屋に持ち入りたい、
仏前に供えたい、
式典に飾りたい、と思うのはエゴイズムで罪なのか。

栽培されている花は
自生している花より命が軽いのか。

頭の中に問いが生まれては消えてゆき
自分なりの考えがまとまった物もあれば
ずっと抱えたままの問いもあります。

カライトソウに
頂きますね、ありがとうと言って
鋏を入れました。


20180612.jpg

花: 唐糸草 車葉衝羽根草
器: 根来瓶子(江戸期)
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