仙翁花


日本の山野草をいけるようになって
随分沢山の花を覚えました。

こんなに清楚で美しい花があるのか…と
胸が躍る思いを何度もして
毎年のように待ちわびる花が増えましたが、
同時に
はじめて出逢う驚きや喜びは、減りました。

そして
はじめて見た頃は
「なんだか、野暮ったいなぁ」と感じたのに、
時間を経て
その魅力に気が付く花もあります。
仙翁花(センノウゲ)などはその良い例です。

センノウが庭で咲き始めると
夏のむせるような緑の中に
パッと目の覚めるような明るい赤花が目に留まるようになります。
この朱色がかった赤を
ベゴニアなどの花の色とつなげて連想したのか、
それとも昭和の着物に多用された朱色を連想したのか、
はじめは鈍臭く感じたのがですが、
今ではどうしてそんなふうに感じたのか
不思議にさえ思う程です。

そういう意味では
閾値を超えないとわからない美学も
確かにあるよなぁ、と感じます。

例えば、京都の色彩感覚です。
明るい水色の地に紫や赤い蝶々。
濃い玉子色の地に朱赤の手毬。
目にした舞妓さんの振袖ですが、
京都独特の色合わせに
その土地の成熟した美学を感じます。
でも、モノトーンのお洋服こそが素敵、と思っている若い頃は
その美しさと初めて出会った際に
派手だとしか感じられなかったりします。

せんのうげの
花の品格や特別感は
もしかすると
そのような類に属するのかもしれません。


日本の固有種ではなく
鎌倉時代の終わりから室町時代の初め頃に
中国から渡来したそうで、
室町時代には大流行りして
七夕の時分に
贈答品としてセンノウの切り花が盛んに贈られ、観賞されていたそうです。
そのため、七夕の節句を仙節(仙翁花の節)とも呼びました。

十五世紀前半に作られた「祭礼草紙」の冒頭には
会所の風景が描かれています。

saireizoujshi.jpg

右奥の座敷にはL字型に押板が配され、
その上には青磁や胡銅の
唐物の花瓶がずらりと並べられています。
剥落していて見えにくいのですが、
その花瓶には仙翁が1本ずつ配されています。
これはおそらく
七夕法楽の際の「花座敷」のようなものだろうと
言われていて、
仙節の景色を今に伝えています。

センノウの仲間には
ガンピやマツモトセンノウ、エンビセンノウ、
センジュガンピ、オグラセンノウ、フシグロセンノウなどあり、
いずれも日本の自然の中では
開発や盗掘のために
見受けられることが稀になっている絶滅危惧種で、
わたくしも山野草屋さんでしか見たことはありません。

多年草なので
忘れていても毎年同じように咲いてくれるのですが、
テントウムシに似た虫が
ツボミや花を食べてしまうことがあり、
今の時期は毎日パトロールしつつ
花のご機嫌伺いをしています。

早くも一輪咲いてくれましたので
夏のご挨拶です。
 

20180604.jpg


花: 仙翁 唐撫子 八幡草
器: 唐銅 下蕪耳付 花入

関連記事
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment

←お返事は基本当ブログ内で致します。ご面倒をお掛けしますが再度お越し下さい