牡丹


1週間程前の事です。

朝、玄関を開けると同時に
高貴なたっぷりとした香りが
湿った空気と共に
家の中に流れ込んで来ました。
目をそちらに遣るまでもなく
庭の遅咲きのボタンが開いたからに他なりません。

生憎昼頃から雨降りの予報でしたので
思い切ってハサミを入れ、
3輪とも家の中に持ち入りました。

馥郁たる香りが部屋中に満ちる中で
牡丹は
どんな草木にも増して
ややこしい手の入れ方を受け付けてくれないことを思い出していました。
具合の悪いところを
ちょっと胡麻化そう…みたいな精神を持って入れようものなら
たちまちに変なあんばいになるのです。
自分の気持ちを正すが如く
まっすぐに入れるしかありません。

器も超正統派の
格の高い物が定番ですが
破れた壷や籠が
思いのほか富貴な風を呼んでくれます。

ただし
やれた器というのは難しくて、
丁寧に作られた籠が
大事に使用されてきた結果摩耗してやれ始めたとか、
力強く引き上げて作られた壷が
窯の中で焼成中に自然に弾けたとかいう類の物でないと
ぼたんは受け付けてくれません。
雑に使われた結果破れてしまった物や
デザインとして人がわざと欠いた物は
そうした人の厭らしさがどこかに表出してしまい
全くお役に立たないのです。
ぱっと見には一見わかりにくいかもしれないのですが、
わかるひとには
瞬時にわかってしまいます。

山の花を上手にいける友人が
「私には牡丹はいれられないな」と言いました。
その言葉を聞いた時、はっとしたのです。
それは能力が劣っているということではなく、
逆に彼女の感度が優れていることに他ならないからです。
自分という人が
世の中で
自然界で
どういうところに属している者なのかということに
敏感でなければ言えない言葉です。
果たして自分はそんなふうに
己を顧みているだろうか、と
考えてしまいました。

ぼたんはそんなふうに
花をいれいける者に資質を問うようなところがあり、
嬉しさと同じぐらい身の引き締まる思いがする花です。
花の王とはよく言ったものだなぁと思います。


20180430.jpg

花: 牡丹
器: 破れ籠

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2 Comments

星宿  

はじめまして。

初めまして。
以前から楽しみに拝読させていただいています。
星宿と申します。
精神的に疲れた時に、日本画のような生け花や
繊細な彩のお菓子やお料理のお写真を見たり
美しい日本語が散りばめられた文章を読ませていただき
とても安らかな気持ちになっています。
以前から何度も訪問させていただいております。

こちらの記事のおかげで初めて牡丹の花の香りを
知ることが出来ました。
何故今まで気付かなかったのか自分でも不思議なのですが。。。
来春の楽しみが1つ増えました。
ありがとうございました。

2018/05/04 (Fri) 22:33 | EDIT | REPLY |   

えるて  

星宿 さま

こちらこそはじめまして ^_^

お返事が遅くなり
失礼致しました m(__)m

牡丹の香り、
お外では風の向きや
他のにおいで飛んでしまうのかもしれませんね。
切り花にして室内に取り込んだ方が
一層際立つように思います。

2階の部屋にいけてあるのに
1階から階段を上ってゆく途中で
漂って来るほどですので…

ほんと、あの香りに出逢うまでには
来春まで待たねばなりません ^_^

それにしても
ご自宅からお散歩できる場所に
二輪草やカタクリやアズマイチゲを見ることができるなんて
私には夢のようで
羨ましいことしきりです。

カタクリもアズマイチゲもニリンソウも
多年草なので、
ハサミを入れても
また来年咲いてはくれるのですが、
春先に咲く花は
いとおしさも倍掛けで、
庭に咲いたものは掘り起こして
「根洗い」をして
器にいけることが多いです。
数日楽しませてもらって、
また土に戻します。

どうぞこれからもよろしくお願い致します。

2018/05/07 (Mon) 21:29 | EDIT | REPLY |   

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