芽生え


もう3月は目の前。
朝夕は寒くても
昼間ふわっと暖かい日があると
通いなれた里山の風景が目に浮かび
気がそぞろになります。

今の時分に野山に遊んでも
花という花が咲いているわけではありません。
芽を覆う銀毛のせいか
なんとなく風景は白っぽく、
林の所々が新芽の赤みを帯びても見え、
常緑の物は冬から変わらず
どっしりとしています。
秋の終わりごろからぽつぽつ咲いていた椿が当期を迎え
あちこちで咲いてはいるものの、
冬の間重宝してきたからか
沢山の開花を見ても
もう春本番はすぐそこに!という気分には
なんとなく、なりません。

オオイヌフグリの群生があったり
オドリコソウも咲いていたりしますが
白らっ茶けた枯草の奥底の方をじっとみると
土の間際に今年の新芽が覗いていて、
死と再生なんていうと大げさでしょうが
こういうところにこそ季節の循環を感じます。


おもしろき 野をばな焼きそ 古草に 新草交り 生ひは生ふるがに  万葉集


万葉の時代、
早春に野辺の枯草を焼くことは
ごく普通のことでした。
土地に火を放つことで
くさむらに隠れている害虫を駆除し、
枯草の灰は土壌改良の肥料となります。
燃え跡から一斉に芽吹く若草を摘むにも
手を枯草で傷付けずとも済み、
春の風物詩だったことでしょう。

それにもかかわらず、
もうすでに新しい芽が生え始めているから
野焼きをしないでくれと
上の歌は訴えています。
こういう柔らかい感性は
杓子定規の行事が
気持ちを置いて行きがちなのとは真反対に
ほっとする思いがします。

冬の間は
野原やあぜ道には
ロゼット型の草が目立ちます。
冬が始まる前には
地面すれすれに張り付く付くように
放射線状に沢山の葉を広げている草達のことで、
タンポポやノアザミが良い例です。
寒い冬を無事に越すために
葉っぱを広げて
なるべくたくさんの日の光を浴び
地面すれすれにあることで
風や踏まれることから身を守っているのですが、
その姿が八重咲のバラのはなびらのようであることから
rosette(ロゼット)と呼ばれるに至ったようです。

今の時期、このロゼット型の葉っぱが
実に様々な色や質感であることが、
畦道などで観察するとよくわかります。

ふかふかもこもこした株、
ぴらぴらした葉っぱの株。
紫がかっているかと思えば
ペパーミントグリーン、
はたまた裏白の葉っぱ、
本当に多様です。

春を待つ姿としては
花よりも
芽生えの草やロゼットの葉っぱに
心を寄せやすく感じるのは
摘み草を春の喜びとした民族の末裔だからなのかな、と
勝手に考えています。



20180228.jpg

花: 野の草々
器: ロブマイヤー ボンボン入れ

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