用途

「これ、なんだと思われます?」

それは直径8cm程で、
ころんとした形状の
新しくも、古過ぎもしない陶器に見えました。

物の不思議さは、
それが長年蔵の奥にしまわれてきた物か、
それとも
大切に大切に愛用されてきた物か、
それとも野ざらしだったり
土中だったりに長年放置された物なのか、
その物が
どういう時間を過ごしてきたのか、
その経過の在り方を
雰囲気として身にまとっていることです。

(いや、不思議ではないかもしれません。
人も、同じです。)

古道具屋さんにありそうな雰囲気なのですが、
球系にちょっと出っ張りがあって
言ってみれば電球のような形で
中は空洞です。
何に使われたものか
皆目見当はつきませんでしたが
家の奥深くに箱に入っていた風情ではなく、
どちらかというと野晒しだったのだろうと思われるような、
ちょっと幽霊のようなところのある
野草の花を入れるのに良い
鄙びた雰囲気です。

「これ、信楽の手榴弾なんですよ」

思ってもみなかった言葉に、驚きました。

先の大戦の末期、
日本では鉄材が不足して
地雷や手榴弾など陶製の兵器を作ったそうなのです。
備前焼や・京焼(清水焼)はパイナップル型で陸軍。
信楽や瀬戸、有田の物は球形で海軍の物だそうです。

目の前にある手榴弾は
クリスマスツリーのオーナメントのような形にも似て
兵器らしい殺気は全くありません。

陶製兵器は製造後間もなく終戦を迎え
殆ど使われることはなかったそうで、
埼玉の川越の荒川にかかる治水橋近くのびん沼川の湿地では
今も廃棄され割れ果てた手榴弾が
カタコンベのように一面を覆っていて、
その異様さゆえ新聞に載ったこともあるそうです。

20180123.jpg

花: 末枯れ粟 柊 豌豆
器: 信楽手榴弾
板: 千里浜で拾った流木


陶磁器の魅力は
壊れやすさというはかなさが
美しさと背合わせであることで、
それが緊張感として現れるとも思います。

どんな名品であろうとも、
脆さを内在している。

日常遣いのための気軽な豆皿であろうとも
陶工の方達は壊れること前提で物を作るわけもなく、
ましてや壊すことを目的に作るのは
どんな心持ちだったろうと
花を入れつつ考えてしまいました。

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