名残りの花


旬には「はしり」「盛り(当期)」「なごり」と三期あります。

日本人にはどうしても「ハシリ」を喜ぶ傾向があります。
出始めの頃は珍しさと
季節の先取りで喜ばれますが、
まだまだ「うぶい」のです。
また、先取りをし過ぎると
珍しさよりも
肌にしっくりこない感じがすることもあります。
量も質もたっぷりとその物「らしさ」をかもすのは「盛り」の頃で
手に入れやすく親しみやすく、
いずれも季節の出会いの物ではあるものの、
花に限って言えば
一番風情に富むのは「名残り」の物です。

桔梗は梅雨の頃から咲き始めますが、
ハシリの頃のまっすぐで素直な姿から見ると、
切った後から枝分かれして伸びる枝に咲く二番花は
たわわに花をつけます。
酷暑の頃はお休みしていて
秋に咲く三番花は
二番花を切った後から伸びた枝につき、
細く、くにゃりと曲がった枝も見られ、
葉も紅葉が始まります。
秋雨に打たれて咲く姿を
去り行く季節を惜しみつつ
名残りの桔梗の花を見ています。

「名残り」という言葉にあたる英語の単語は
ないのだそうです。
この言葉の持つ意味やニュアンスを
より具体的に示す様々な単語で翻訳せねばなりません。
たとえば「名残りの月」を英語に訳すと
「morning moon」となってしまい、
日本語の持つニュアンスのような物までは訳せません。


辞書をひくと「物事が終わってもあとに思い起こさせる気分・気配・影響」
とあることから
「名」が「残る」から来た言葉だと思われがちなのですが、
実際のところ「なごりを」「名残り」と書くのは当て字なのだそうです。
正しくは「余波」と書いてなごりと読ませるそうで、
吹いていた風が静まり返ったあとにまで残っている波や、
波が打ち寄せた後に残る海藻などを
「波残り」と呼んだことを語源とするようです。

他の民族に詳しいわけではないのですが、
わたしは、こういうことを見逃さず
それに名前をつける日本人という民族の感性に
ぐっと来ます。


庭のヤマアジサイに隠れるようにして
名残りのカワラナデシコが一輪だけ咲いていました。
ヤマシャクヤクの末枯れた実がなければ
遠目にはまるで初夏の花かと勘違いしてしまいそうですが、
近づいて見るとススキも天人草も虫食い葉で
着実に季節は進んでいます。


20170920.jpg

花: 河原撫子 山芍薬の実 天人草 白花蓼 露草 鵯花 田平子 力芝 薄
器: 自作土器
板: インドネシアの屋根瓦の古材

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4 Comments

まめこ  

初めまして。
ホウチャクソウのことを教えていただきありがとうございます。
和の趣を感じる素敵なブログですね。

自分はまだまだ知らない植物が沢山あるんなだなぁと、改めて思いました。

2017/09/21 (Thu) 23:48 | EDIT | REPLY |   

えるて  

まめこ さま

こんにちわ ^_^

わたしも
名前を知らない植物が
たくさんあります。

気に留まった時に
一つ一つ!ですね

2017/09/22 (Fri) 10:59 | EDIT | REPLY |   

みゅうぽっぽ  

日本人の、感性、素敵です!日本語も英語にはない素敵な表現!季節季節の自然を美しい言葉で表す、良いですね!四季のある日本だからでしょうか?日本人の美しい感性、言葉、大事にしたいですね!!

2017/09/23 (Sat) 08:56 | EDIT | REPLY |   

えるて  

みゅうぽっぽ さま

こんにちわ

なんかね、訳しにくい単語ってあるのです。


外国語の、
それも基本となるような単語中には
たくさんの日本語の単語を並べ連ねないと
正しいイメージが
つかめないような単語です。

そういう単語って
実は、その民族独特の感性が如実に表れていることが多くて、
この「名残り」という言葉も
外国語には訳しにくい
日本人独特の美意識を示しているなぁと感じます。

そういうのって素敵だなぁ、
素晴らしいなぁとは思うのですが
でも、選民思想みたいなのには繋げたくなくて。

日本だけではなくて
英語を使う人達のこういう合理的なところは素敵、とか
民族の特性?みたいな部分を
理解することで、
仲良くなれる礎に出来るのではないかなぁと
ぼんやり思ってみたりします。

2017/09/24 (Sun) 03:01 | EDIT | REPLY |   

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