瓦そば


大学生の頃、
夏休みに知人のお子さんの
受験勉強を手伝ったことがあります。

その日のことは既に記憶もあやふやなのですが、
家の中には私達だけでした。
午前の勉強がもうすぐ一息つくという頃に
「お昼ごはん用にと
母が用意して行きました」と
蓋のしてあるホットプレートのスイッチを入れているのを見て
はて、と疑問がわいたのです。

朝早くに仕事に出かけてしまう母親が、
ホットプレートにあらかじめ用意しておける、昼食…

予想が全くつきませんでした。
しばらくするとじゅうじゅう音がしてきて、
既にそこに食材が仕込まれていることがわかります。
ソースの匂いもしてきません。
ますます不思議です。

6分かそこらして、蒸気が十分に蓋の外に漏れてきた頃でしょうか。
じゃあ昼食にしましょう、という段になって
蓋を開けられ、びっくりしました。

「かわらそば」だったからです。

瓦そばは、抹茶を練りこんである茶そばで作ります。
山口県の川棚温泉の名物料理で、
山口のお店で頂くと
名前の通り瓦をアツアツに熱した上に
茹でた茶蕎麦を敷き、
牛肉と錦糸卵、その他スダチや香味野菜、海苔やもみじおろしなどをのせて
暖かい麵つゆで頂くお料理です。

20170824.jpg


この写真は直径27cmのテフロンのフライパンで
二人分をどんっと作り、
そのままテーブルに供しました。
ワンプレート料理みたいなものですから
うちでは茶蕎麦よりも具の方が多いぐらいです。

いわゆる蕎麦好きの方々から見ると
邪道なそば料理に違いありません。
私もこれをそば料理というよりは
一つの料理のジャンルのように感じています。

あの夏の日に驚いたのは
茶そばがほとんど見えないくらいに乗った
さまざまな具材が目に鮮やかだったことと、
お蕎麦が茹でて数時間経った後でも
片面が香ばしく焼かれるからか
伸びた感がせず美味しく頂けたことです。
おそばから蒸気が上がるので、
上に乗せた具材もほんのり温まり、
けれど香味野菜がくたっとなる程は熱しませんので
キュウリなどもしゃっきりと頂けます。

この瓦そばですが、
西南戦争の折に熊本城を囲む薩摩軍の兵士達が
野外戦の合間に瓦を熱して野草や肉等の食材を焼いて食べた話を参考にして
川棚温泉の旅館で作られたのが最初だそうです。
瓦そばも東京のお店などでは
ステーキ用の鉄板で供されることもあると聞きました。
そういえばすき焼きは
農作業の合間に農機具の「すき」を熱して野鳥を焼いたのが最初で
くわ焼きもルーツは同じだとか。
ふと考えをめぐらすと
土鍋も瓦も元は同じような素材で、
マグリブ(北アフリカ)料理で使うタジン鍋も
水の貴重な地域での料理の際、
食材の持つ水分を上手に利用して
蒸し焼きに出来るような山高の蓋がついてはいますが
理屈は同じです。
先人の工夫には知恵がいっぱい詰まっています。

久しぶりに瓦そばを作り、
そんなことを思い出しました。

牛肉には、少しお醤油を炒り付けておく方が
味が決まりやすいように思います。
途中、味に飽きてきた頃に
麺つゆにスダチ等を絞って入れると
より爽やかに頂けます。

懐かしの味です。
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4 Comments

みゅうぽっぽ  

お早うございます!昨日は拙い私のブログにコメントありがとうございました。瓦そば、父の法事のとき出てきました。その時は一人一人、瓦に乗って出てきました。私もこの時まで、瓦そば食べて事がありませんでした。懐かしいですね!私の実家は福岡です。地方地方のお料理、面白いですね!

2017/08/26 (Sat) 06:25 | EDIT | REPLY |   

えるて  

ミュウぽっぽ さま

こんにちわ ^_^

記憶の中のお料理は
その時のシチュエーションや
心情と共に
イメージが残りますよね。

私は、この時の瓦そばは
その受験生のお母様の気持ちが
ひしひしと伝わってきて
美しさやお味以上に
そのお気持ちにグッと来てしまいました。

2017/08/27 (Sun) 03:43 | EDIT | REPLY |   

おけい  

「瓦そば」というそばの食べ方があるのを初めて知りました。
東北には同じような食べ方はないと思います。
会津には清水の中に入れたそばをそのまま食べるつけ汁なしで
食べる「水そば」という究極のそばの食べ方があります。
所変われば品変わるですね!

2017/08/27 (Sun) 09:49 | EDIT | REPLY |   

えるて  

おけい さま

こんにちわ!

今でこそなんでもありますが、
信州や東北を訪れて
私の実家のあたりの食文化を顧みると
もともと蕎麦文化圏ではないように感じます。
子供の頃は
大晦日以外でお蕎麦を頂くことは
少なかったです。

その上、瓦蕎麦は茶蕎麦がベースですから。
そして、牛肉と錦糸卵が乗っていますから。
もう異次元ですよね。

水蕎麦は、長野や山梨でお蕎麦屋さんに入って
「はじめはこれをどうぞ」といわれ
頂いたことがあります。
粉の味がダイレクトに伝わって来ますね。
そういう意味ではうどんの方が
分が悪いかと思うのですが、
香川県まんのう町の谷川米穀店のうどんは
うどんへの感覚が一新されます。
是非いらしてみてください!

2017/08/27 (Sun) 11:14 | EDIT | REPLY |   

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