無に帰すということ


先日テレビで
福島の震災の被害にあわれた方が
ご家族を土葬にせざるを得なかったお話をなさってました。
被災した環境が火葬することを許さず
代々墓に入れてあげられなかったことを
申し訳なく、情けない事だと
随分と嘆いていらっしゃり
胸に迫るものがありました。

同時に、自分の中に小さな驚きがありました。
私自身が土葬の方がむしろ良いと感じていることに
はっきりと気が付いたからです。

人の物の考え方というものは
死や葬り方という生死に直結するような事でさえ
どこまでが自然発生的なもので
どこからが社会から植えられた感覚なのかわかりません。

チベットでは、お葬式にあたる儀式を終えた後は
魂の解放された亡骸はただの抜け殻で
何の価値も持たないという共通認識があるそうです。
魂の抜け殻の肉体を天に届けるための方法として
ハゲワシなどの鳥類に亡骸を与える
鳥葬(天葬)が一般的だそうです。
気候や土地の制限などからも
その送り方が適しているのです。

これは、
チベット社会の宗教と共通認識があるからこそ
成り立っている葬り方で、
違う宗教、違う土地柄の人達からみれば
なかなか受け入れ難い風習だと思うのです。

じつは、私がお米を分けて頂いている集落は
今も土葬が行われています。
以前ちらりとその集落について書いたことがあります。

秋分 末候:水始涸(みずはじめてかるる)

山の上の方にぽかりと開けた集落で、
風が良く抜ける土地柄ゆえ
無農薬で農作物を作っても虫の被害にあいにくいそうです。
そして他のどの集落とも数キロ以上離れているため
今も行政が土葬を認めているのだと聞きました。

日本では、人間だけが食物連鎖に加わっていません。
社会的な問題のことなど
何も省みてはいない
感覚だけのお話ではありますが、
人は他動植物の命を奪うばかりで
自分の身をもって
自然になんのお返しもしないことが
どこか後ろめたく思えるのです。


そんなことを考えていて
今から10年以上前に愛猫が亡くなった時
本当は土葬で送りたかったことを思い出しました。
そのお墓の上には石など置かずに
一本の花の咲く木の苗を植えたかったのです。

その当時
世田谷の一軒家を借りていて、
そこには土いじりを楽しめる小さな庭があり、
夏の暑い盛りに猫の姿を探すと
つつじの木漏れ日の射す植え込みの日陰で
涼を取っていることが間々ありました。
その猫は冷房が嫌いで
夏になると家の中にいる時間が格段に減ったのですが、
冷たくひんやりとした土の感触も相まって
おそらくつつじの日陰、
その時期一番自然に涼しく快適な場所だったのでしょう。
溺愛していたものですから
「猫って天才…」と
ほれぼれと見遣ったものでした。

日々を一緒に過ごしていた私と違い、
彼女と年に数回顔を合せるだけの私の母は
猫の年齢なりの衰えを感じていたのでしょう。
猫が亡くなる半年程前だったか、
先回りするかのように
「土葬をするということは、
 犬やカラスがわるさをして掘り起こさないように
 ものすごく深く掘らなければならないのだ」と
何かの話題に挟んで、
言い含めました。
なにより、借家の庭に土葬するわけにはいきませんでした。

インターネットで探したお寺で荼毘に付し、
小さな骨壺に入れたまま
数年間置いていたのですが、
それを見るたびに母は
「あんなに可愛がっていたのだから
万が一にも悪戯をするということはないだろうけれど、
こんなところに持ってないで
早くお墓を作りなさい。
東京で難しいなら、持って帰ってあげよう」 
何度か説教されるのをうやむやにしているうちに
今の家に引っ越しました。

それ故か、母が今の家に初めて来た際、
早々我々に指示をしたのは
猫のお骨を土に埋めることでした。

そのために絡子と数珠まで持ってきていて、
穴を掘り、埋めている最中
般若心経と舎利禮文を唱えて
目線で我々に指示を飛ばして
まるで親分風情です。

お陰様で、
彼女は今我が家の南西の角
花筏の木の脇に眠っています。

本当は、身肉共に
土にかえらせてやりたかったのですけれど。


20170810.jpg

花: 夏藤 撫子 純白蛍袋
器: 雑器 籠


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6 Comments

雨宮清子(ちから姫)  

初めまして
自然体の、それでいて洗練された文章と写真に魅了されています。

土葬が許されている地域があるとは驚きました。
私も人生の終盤に近付いて、あれこれ考えます。
歴史を学ぶ者としては墓ばかり見て歩くこともあり、そこでいろんな発見もできますので古い墓石は貴重なのですが、一方、おびただしい無縁さんを見ると墓の虚しさが感じられて、絶対、ああなりたくない、と。

カナダで亡くなった姉は海への散骨を希望し、その通りになりました。
私は時々、姉が懐かしい日本を目指して大海原を泳いでいる姿を想像します。

2017/08/10 (Thu) 09:44 | EDIT | REPLY |   

えるて  

雨宮清子 さま

はじめまして ^_^
ご丁寧なコメントを下さり、ありがとうございます。

力石、私は伏見稲荷の物を持ち上げたことがあります。


ついに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを
(古今集)

在原業平が病いに臥せた際に詠んだそうです。
いざ自分の身に最後が迫ったり
大切な者を亡くしたりして、
はじめて実感する歌だなぁと思います。

旅行の際、墓地の近くを通ると
文化の違いにはっとすることが多いです。

屋根がついていたり、
墓標が金色だったり、
一つ一つの敷地が大きくてお墓の前で宴会ができる程のスペースがあったり、
丘や山と一体化したかのような墳墓群だったり。
たとえばパリの
ペールラシェーズ墓地などは
静かな彫刻が壮麗さながらで、
ワシントンDCのアーリントン墓地では
白い墓標で丘がおおわれていて、
なによりそのすべての墓標の前に
棺桶一つ分のスペースがあり
ところによってはまだ土がぐっと盛り上がっていて、
目には見えないけれども
規則的に横たわった人々が丘を覆っているのかと思うと
めまいがしそうでした。

もうすぐ盆の入りですね。
お姉さま、今ごろどのあたりを泳いでいらっしゃるでしょうか。

2017/08/10 (Thu) 15:03 | EDIT | REPLY |   

おけい  

私の田舎では、40年前まで土葬でした。
44年前に亡くなった祖母が我が家での土葬による
最後の葬式でした。自宅から棺と共に親類一同数十人
で行列してお寺に向かいます。

組という同じ部落の人が墓掘りを担当するのですが、
以前に埋葬された人の骨が出てくることがあるので、
それもまた一緒に埋めてしまいます。犬や猫は当然
家の敷地内に埋めていました。それが当たり前と
思っていたので、初めて火葬場に行った時には、
なんだか釈然としませんでした。

チベットの鳥葬の場やイランのゾロアスター教の
葬送の場(鳥葬や風葬)に行きましたが、かえって
すがすがしい感じがしたものです。

私ども夫婦は墓は造らず、散骨とすると遺言書に
したためていますが、禁止されていなければ、
実家の山や田んぼに撒いてほしいくらいです。

2017/08/11 (Fri) 10:00 | EDIT | REPLY |   

えるて  

おけいさま

こんにちわ

今、ヴェネツィアに向かう
飛行機の中です。

風葬や鳥葬の斎場にいらしたとは…
さすがですね (o_O)
儀式もご覧になられたのでしょうか?
鳥葬は骨まで残さないように取り計らうと聞きました。
以前おけいさまが「死ぬのも大変なことだ」とおっしゃっていたのが印象的でした。

わたしの実家のあたりでは、
60年程前に最後の土葬があったそうで、
大きな赤ちゃんで
通常のお棺が合わなかったから
そうせざるを得なかったと聞きまし。
それから30年近くたった夏の夜
その赤ちゃんの妹達が
うちに来ていたのですが、
帰ったかと思ったら数分後に
「おねぇちゃんが!おねぇちゃんが!」と
這々の態で2人で石段を駆け上って来ました。
石段から500m程先の丘陵にお墓が望めるのですが、
彼女達の家のお墓のあたりから人魂が飛んだそうで、
私には後にも先にも初めての経験でした。

私達も後々のことを
ちゃんと考えねばなりません。

2017/08/12 (Sat) 07:51 | EDIT | REPLY |   

What is leg length discrepancy?  

Hey there! I know this is kind of off topic but I was wondering if you knew
where I could locate a captcha plugin for my comment form?
I'm using the same blog platform as yours and I'm having trouble finding one?
Thanks a lot!

2017/08/19 (Sat) 13:47 | EDIT | REPLY |   

Erte  

Hello.

Actually, I feel some bother if i have to write authentication when I leave comment to others.
We need to protect.
but I want to omit a time even a little.
that's the reason why i don't use it.

2017/08/23 (Wed) 04:10 | EDIT | REPLY |   

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