花を教える


もう随分前のことですが、
あるお嬢さんに
花を教えて欲しいと言われました。
一言で「花を習う」と言っても
その幅は果てしなく広く
天と地ほどの差があります。

どの程度のことを考えていらっしゃるのか
見当がつかなかったので、
詳しくお話を伺わねばと思い
「一度お茶でも召し上がりにお越し下さい」
と申し上げたところ
約束をした日になんと、
山摘みのお花を
沢山たずさえていらっしゃいました。

お茶の準備しかしていなかったので
面喰いましたが、
やる気満々でいらしたので無碍にも出来ず、
私の器からお好みの物をひとつ選んで頂き、
花を入れて頂くことにしました。

おっとりとしたお人柄そのままに
手も思考もゆっくりとなさった方で、
途中手が止まってずーっと考え込まれたら
アドバイスをする、
ということを繰り返しながら
5時間マンツーマンで行って
ようやく1杯の花が入りました。
7~8本の草花を寄せ集めた
素直で無理のない、
気持ちの良い籠の花でした。

正直はじめはどうなることかと思ったのですが、
私もその方も頑張った甲斐があり、
5時間前とは
花のいけ方というよりも
物の見方が別人のようでした。

「花活けが上手になるということは
 花を入れることだけが上手くなるわけではないのですね」

疲れと興奮とが混じったような表情で
おっしゃる姿を拝見して、
彼女なりの、なんらかの理解に至られたのだなぁと
感慨深く思ったことです。

その時のことを思い出すにつけ、
そういえば
ワインだの料理だのを教えていた頃にも、
この人の人生が確かに変わった
と思う瞬間があったなと、思い出しました。

人が、学ぶことによって
それまでその人の中に持ち合わせなかった何かを取り入れ、
それをただの知識とせず、
知ることによって開けた可能性や
知った喜びで
明確な光を放つ。

教える側もその光を浴びることで
思いがけないパワーを貰うことになり、
何らかの気付きを得られる。

私にとって
教えることで得られる何かがあるとすれば
こういう喜びなのだ、と
久しぶりに思い出しました。


そういえば、
花を入れ終わられた後
おしゃべりをしていて
想像だにしない角度から気付きを得ました。

そのお嬢さんに、
以前就いていた就いていた仕事のことを聞かれ、
新卒の頃は都銀系のOLでした
と申し上げたところ
もの凄く驚かれたのです。

何をそんなに驚くことが…と不思議に思い
理由を伺ったところ、
「CAか外資系の我儘な社長の秘書さんだったに違いないと思ってました」 と仰り、
今度はこちらの方が心底仰天しました。

そんな仕事についていたような
華やかさにも美貌にも縁遠い姿なので、
腰が抜けるほど驚いたのです。

「そういう友人は沢山いますけれど、
私はただのOLでした」
と、モゴモゴと申し上げたところ、
「どうしてOLをなさってたのですか?」
と聞き返され、少し困りました。
私にとってはOL生活をしたことになんら理由などなく、
自分の中に明確な答えなどなかったからです。

「どうしてって… 
自分は本当の本当に
ごくごく平凡な 取り柄も才能もない者なので、
親の体面が保てるような会社なら
どこでも良いと思って…」

自分の口から出てきた瞬間に
「あぁ、私ったらそんな考え方なのだ」 と、
普段は奥深くにひそんでいて見えない自分の本心に
思いがけず出逢って、
ひどく打たれたのです。

その頃の自分に会いに行って
「謙虚は良くても、自己卑下はいかんよ」と、
肩をぽんぽんしたい気持ちになりました。


2018_1018.jpg

花: 白樫 嫁菜 雌日芝
器: 竹六斎作 六目網竹籠


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3 Comments

祐子  

こんばんは♪
自分の事は、自分でも気付かない内に
低く評価していることがありますね。
他人と話して居て、思わず口を衝いて出た
言葉に気付かされた経験が私にもあります!!

先ずは、自分が自分を認めてあげなくては、
自分本来の生き方が出来ないですね。

2018/10/18 (Thu) 20:58 | EDIT | REPLY |   

えるて  

祐子 さま

こんばんわ ^_^

> 他人と話して居て、思わず口を衝いて出た
> 言葉に気付かされた経験が私にもあります!!

そうですか~

そういう本心って、
表層意識に上がって来ないことで
自分の身を
守っているんだろうなぁと思います。

切ないですね。

2018/10/20 (Sat) 01:39 | EDIT | REPLY |   

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2018/11/11 (Sun) 12:49 | EDIT | REPLY |   

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