花留 笄留め


器に仕掛ける形での花留めとして

①一文字
②十文字
③又木留め

と、紹介して参りました。

本日は ④笄留め  です。

笄は「こうがい」と読みます。
箸のような棒状の物で、
元々は髪を崩さずに髪掻きするための道具だったようですが、
室町時代、宮中に仕える女官が
表立たない所で作業などをする際に
長く伸ばした垂髪が邪魔だったのを
笄に巻き付けて
まげやシニヨンを結って
仮に固定したことなどから
髪留めに使われたようです。

今の笄は両端は同じ太さですが
その当時は箸のように片方の先が細かったそうなので
髪をぐるぐるぐと巻き付けた笄の先っぽを
シニヨンの根元にすっと差し込みやすかったのでしょう。
笄を抜けば元の髪にすぐに戻ったので
長い垂髪の宮中の女性には
便利だったのだと思われます。

それってかんざしでは?
と思われる方もいらっしゃるに違いありません。
確かに今となっては笄が廃れ
かんざしがその役目を担っていますが、
元々の発生の仕方が異なっていて、
かんざしは「挿頭(うず)」に起源があります。
葵祭の際、髪に葵の葉を飾りますが、
あれも挿頭の一つです。
古代、神事に際して日本人は
髪や冠に草花を挿すことで
自然や神様と
より一層親和をはかったのだと思われます。

そのような起源に発して
後に飾りとしての性質が強くなったのが簪(かんざし)で、
「髪挿し」とも「花挿し」とも字が当てられます。
笄は実用品に端を発していましたが、
江戸期のしっかり結い上げる日本髪の時代には
かんざしと同じく
装飾品へと変遷したようで、
真ん中で二つに分解できて
差し込み式になっている中抜けの物が出来てからは
結いあがった髪に挿すだけの 
ただの装飾品になってしまっています。

以下が現代の笄です。
途中の継ぎ手の部分が見えるでしょうか。

Kougai

明治〜大正期の笄(木製) wikipedia より引用

昔は、動物の骨だったり、
片端が二又に分かれているものもあったようです。


この笄(こうがい)を模した花留めが
笄留め(こうがいどめ)です。

笄に仕立てた花留めの枝に
草木を巻き付けるわけではありませんが、
髪をくるくるっとまとめてその中を貫いて挿すが如く
足元を二つに割った枝の間を
花留めの枝に貫かせるように
挟みこんで留めます。

kougai_2.jpg


重い枝などをしっかりと留めることに適していると思います。
反面、固定力の強い留め方ゆえ
留めた後に動かしにくい花留めでもあります。


まず、枝と花留めの接点を増やして安定させるため、
笄の上下の部分は
なるべく平らかになるよう、削いでおいてください。
両端は一文字の要領で削ります。

kougai_1.jpg


花を笄に留める際、
笄の表面を削った部分が
二又に割った枝の断面と
ぴたりと合うことが必要です。
いや、実際は、
削れてなくても留まるには留まりますが
点や線で支えるのと
面で支えるのはやはり違いりますので、
丁度良い按配に削ることによって安定した花留めになります。

kougai_4.jpg

上は、笄留めをしている器を横から見た図です。
わかりやすくするために
大げさなサイズで
笄留めを描いています。                                                                

草木の立たせ具合によって
器(落とし)の中で笄留めを留める場所がかわります。
それによって、
笄の削らねばならない部分が変わることが
お分かり頂けるかと思います。

これをぴたっと合わせるのは
なかなか慣れが必要で、
もし上下両方が上手く行かない場合は
花留めの方を回して
足元を割った枝の上の方だけでもぴたっとあうように
角度を合わせて下さい。

基本、器(もしくは落とし)の口縁と
笄と枝の断面が接しているところと、
二又に割った枝が笄を押し戻して元に戻ろうとする反発力とで留まっています。
その上で、枝の後ろが器(落とし)の内壁にぴたっと合っていれば完璧です。

kougai_3.jpg


器に留める際は
寝かせ気味に枝を出したい場合は
器(もしくは落とし)の上の方に。
立たせ気味に留めたい場合は
下の方に留めると良いと思います。


流派いけばなにおいては、
これを横木留めとか
横かんざし留めと言うこともあるそうです。

または、二本の枝の上と下を縛った物や
笄型の竹の中を長いロの字型に抜いた物を
器(もしくは落とし)にはめこんで
間を花留めに使ったものを
笄留めと言うこともあるようです。


元々の笄の形状や用途を考えてみると、
「かんざし」と「こうがい」の用途が
大きく変化していった江戸時代に
流派いけばなも興隆しました。
いろんな面から、
言葉も意味も混ざってしまった結果なのではないかと思います。

花留め方法一つ掘り下げることで
文化史や服飾史にまで派生して、
飽きることがありません。


20170531.jpg

花: 令法 蒲公英 姫女苑
器: 古籠



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2 Comments

nonohana626  

笄留め

リョウブの線の動きに魅せられて、いい朝を迎えさせていただいています。

2017/06/01 (Thu) 07:40 | EDIT | REPLY |   

えるて  

nonohana626  さま

こんにちわ

良い気分をお届け出来たなら、ウレシイです ^_^

2017/06/03 (Sat) 01:08 | EDIT | REPLY |   

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