二百十日


高校生の頃、
授業の前に先生方が
たわいないお話をなさる時間が好きでした。
休憩時間の後、
友達とのおしゃべりに気持ちが残ったままの生徒の気持ちを
授業に向けさせるための
数分だったのでしょうが、
お話を楽しみにしている授業もありました。

「もう随分前のことなんだけど、
『教師なのに
源氏物語五十四帖全てを
読んだことがないのか』と言われたことがあってね。
そんなふうに言われて
ちょっと悔しかったのだけれど、
家庭に帰れば
家事はあるし、仕事はあるし、
なかなかまとまった時間が取れるものではなくて。
それで、意を決して
行き帰りの通勤のバスの中で
読み始めました。
荷物も多いから
初めに本をバラバラにして
その日の分だけ持ちだしてね。
数年かかったけれど、
54帖全て読破しました。
どんなに続きが読みたくても
バス停に着いたら降りなくてはならなくて、
気持ちの切り替えの訓練にもなったわ。」

ある日の国語の先生のおしゃべりですが、
今も記憶に残っています。

大きな山は登るにも決意が必要で、
でも大仰な装備でなくても
そんなふうに
工夫次第で踏破も出来るのよ、という
示唆を与えて貰えたのだと思っています。


今日は雑節の「二百十日」。
立春の日を初日として210日目で
台風の多い頃です。
今日の東京は晴れ渡っていますが
昨日までは台風が続けて来ていました。

源氏物語の二十八帖「野分」は
台風の古称で
特に二百十日の頃、
野原の草を吹き分けてゆく強い風のことです。

「野分」の巻のあらすじですが、
激しい野分の風の吹く日、
夕霧は父である源氏の元を訪れました。
野分の風のせいで館中がわらわらする中、
偶然父の最愛の女性の紫の上を垣間見て
心を奪われてしまいます。

昔は、高貴な女性は
館の奥深くにいて、
顔を見せないものだったので
夕霧が実母でない紫の上をはじめて目にしたのも道理です。

源氏も夕霧と同じく幼い頃母を亡くし、
元服前の幼い頃は
異母である藤壺の女御の御座所に
自由に出入りしていました。
しかしその結果懸想し
不義の子(後の冷泉帝)が産まれるに至ってしまいました。
紫の上が魅力的な人であるからこそ
実の息子であろうとも接触しないよう
気を付けていたのに、
台風ゆえにこのようなことが起こるのです。

また翌日、玉鬘や明石の姫君のことも垣間見ます。
毎日このような美しい女性を目にして暮らしたいものだ…と
心を乱しつつも、
幼馴染で恋人の雲居の雁へ文を送るのです。

「野分」は実際の台風の嵐だけではなく、
父の源氏と違って
生真面目な夕霧の心の中に
思いもかけず巻き起こったドキドキのことでもあるようです。




20160830.jpg



花: 軍配なずな 山芍薬 アザミ 赤爪草 吾亦紅 姫女苑
器: 雑器大籠

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2 Comments

式田香甫  

感謝をこめて!

おはよう御ざいます 楽しみに訪問させて頂いております そして 毎回これまでの来し方を反省しております 

2016/08/31 (Wed) 04:22 | EDIT | REPLY |   

えるて  

式田香甫 さま


見てて気持ち良い! でも
参考になるな! でも
拙い私の花が
なんらかの
良い方向に
少しでもお役に立てていれば
嬉しく思います 

2016/08/31 (Wed) 23:20 | EDIT | REPLY |   

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