花の兄 ①


今年は暖冬で、
年の瀬からマンサクなど春の花がほころびて
予想外のことに慌てていました。

梅も、いつもより2週間から一か月も早く咲き始め、
これは2月にはもう散ってしまうのではないかと
危惧していたのですが、
季節の帳尻が合ってきたのか
寒緋桜の咲き始めている脇で
梅が見ごろを迎えています。

梅は、冬の終わりの早春の頃
他の花々に先駆けて咲くことから
「花の兄」と呼ばれたり、
同じく春告草、匂草、風待ち草などと言われることもあります。

水仙や蝋梅に負けず劣らず
梅の香りの漂っている嬉しさは比類ありません。
初秋の金木犀の香りには
クラクラとあたってしまうような具合なのに
梅の香りは「逃さじ!」とばかりに
必ず深呼吸してしまいます。

わたくしの育った家には小さな梅林があり、
祠の横の石段を十段程上った先から見下ろす谷戸に
十数本の梅が植わっていました。
戦前は田だった土地だそうで、
小作制度がなくなって手入れをする人がいなくなったので
ある程度放っておいても良い果樹を、ということで
その場所には梅を植えたのだそうです。

住まいからその梅林は見えないのですが、
あれ、もしかして…と
石段を駆けのぼると
極寒期の縮こまった体の中を
すがすがしさで満ち溢れさせるかのような香りに迎えられ、
梅の花が咲き始めていることに
うずうずするような嬉しさを覚えていました。

しかしながら、
梅の花の香り程
消えてしまいやすいものもない、と思います。

家族に梅の花の香りの話をした際、
その香りを知らないと申しますので
それは大変!と 
温泉に行きがてら
週末に熱海の梅園に行ってみよう、ということになりました。
既に実家を離れた後のことです。

500本弱も植えてある広い梅園なら、
どれほどの香りが満ち満ちているだろう…と
期待して行ったのですが
満開の梅の中、
園内に香りが漂っていないどころか
枝を引き寄せ花に顔を近づけてみても
信じられない程香りがないのです。
ひどくショックでした。

おでんや甘酒などの飲食物の香り、
普段は意識することのない
人や衣類の匂いに掻き消されているのだ、と
すぐさま気が付きました。

人の波を背に
梅園の端の方へ端の方へと歩いてゆき、
フェンス近くの本当にはしっこに植わっている梅から
ほのかに
自分の知っている香りが立ち昇っていることを確認した時の安堵感は
今も忘れられません。

どんなに濃厚に漂っていても
気持ち悪くなることも酔うこともないのが梅の香りだと思うのですが、
南高梅など、
香りの弱めの梅があると知ったのは
その後のことです。



20170216.jpg


花: 紅梅 白梅
器: バカラ


明日に続きます


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