大雪 末候:鱖魚群(さけのうおむらがる)


毎年9月になると鮭の遡上が始まり、
東京のお魚屋さんにも生すじこが並びはじめます。

はしりの頃は高価で、卵も未熟な感じですが、
月末頃には
思うような物が思うような値段で出回り始めるので
よし!と頃合いを決めて
まとめて買い、
塩漬けと醤油漬けのいくらを仕込んで
方々に配ります。

冬から夏まで出回っているイクラは
必然的に、冷凍物です。
若干、食感がねっちりとします。
自家製イクラは
コクと旨味のわりに意外な程あっさりはらはらとしていて、
この時期の物を
ほかほかの炊き立てゴハンにたっぷりかけて頂くと、
他の季節にイクラを手にする事は
殆どなくなってしまいます。

今時分でも名残りの生すじこが
時折入荷していますが、
多くの物は皮がしっかりとして
歯から逃げるような弾力が出てしまい、
口の中に皮が残るので
お好き好きがあると思います。

今日の暦には
鮭が群れをなして川を遡上するとあります。
私はその風景を見たことはありませんが、
人のように
個人の願望だとか欲求を達成する感とは違って
ただ種の本能のみに従って
上流へ上流へと群をなしている
その姿を想像するだけで、
なんて雄大な風景だろう、と思います。

しかしながら、
確かに1月頃までは鮭も川をさかのぼるものの
なぜ今の時分に?と疑問に思い
「鱖」という見慣れない漢字を調べてみました。

「鱖」の音読みは「ケイ」「ケツ」です。
「鱖魚(ケツギョ)」は
中国大陸東部で「石桂魚」と呼ばれる淡水魚のことで、
鮭と同じく、群れて泳ぐ魚だそうです。
中国の暦が日本に入ってきた際
同じ魚が日本にはいなかったので、
群れて遡上をするという
同じ性質を持つ「鮭」の読み方を充てたと思われます。
くしくも「鮭」には「ケイ」という音読みも存在します。

元来が、広さも習慣も全く違う
大陸の大国の暦です。
暦一つ、
他から借用するということは
こういう擦り合わせが生じるということなんだなぁと
思いました。

そもそも「鮭」という言葉は、
元来「白鮭」のことをのみ指して言う言葉でした。
日本の川に遡上する鮭のほとんどが
この「白鮭」だからです。
昔はお歳暮に
荒巻鮭を一本、よく頂いたものでした。
あれは白鮭から作られるのです。

なので、キングサーモン、アトランティックサーモンなど
「サーモン」は鮭の英語名というよりも、
日本の川に全く遡上しないサケ科の魚類を指します。

紅鮭は択捉島が降海の最南端なので
大半がロシアやアラスカなどからの輸入品で、
名前の通り身が赤い魚です。
海では銀色だった皮も、川に遡上する頃は婚姻色で
頭部以外の全身が紅色に染まります。

銀鮭は、これも降海の最南端が千島列島なので
現在の日本ではやはり
天然物の水揚げがなく、
成長スピードが速いため三陸沖で養殖されていて
身はオレンジ色です。

紅鮭も銀鮭も、
日本では水揚げされないのに
どうして「鮭」の文字が充てられているのだろう…
と思っていたら、
実は北方領土の問題に繋がっていて、
ドキリとしました。

それらの多くのことを
私達日本人は
ほとんど知らずに、
毎日のように頂いている親しみ深いお魚が
鮭なのです。


紅鮭の色にも似た、名残りの紅葉です。

20161217.jpg


花: 紅葉 菊 實蔓
器: 雑器大籠

関連記事
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment

←お返事は基本当ブログ内で致します。ご面倒をお掛けしますが再度お越し下さい