小雪 初候:朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)


今の家に越してきた当初、
庭のハナミズキは生垣を超える程度の樹高でした。
今は、というと
2階のベランダをはるかに超えて大きくなり
春先は2階でお花見が出来る程です。

10月の終わりには
見事な紅葉を楽しませてくれ、
11月の声を聞いたかと思うとまもなく
日一日と落葉してゆき、
ひとあめごとに色も葉も失せ
今はもうわずかに
数える程です。

今月は2階のベランダの防水工事をしているのですが、
日々、塗装の上に振り落ちてゆく葉っぱを
はらはらした思いで見ておりました。

秋の末頃から冬の初めにかけて、
早い雲足と共にやってくる
ぱらぱらと降る通り雨には
「時雨(しぐれ)」という名前がついています。
それになぞらえて、
落葉がしきりに降りそそぐ様子を
「落葉時雨(おちばしぐれ)』と呼ぶそうです。

わずかな花を探しに
里山に出かけ、
木々を抜けて来る
思いがけなく冷たい空気の香りにはっとし、
かさこそとした落ち葉の音と
無音に近い静けさの
繰り返しの中にいると、
身を剥がれた木々は
寒々しくも、小ざっぱりとも見え
菱田春草の描く「落葉」は
あの淡い、壊れやすそうな空気感が
まさに今の季節を表しているなと
思い出したことです。


pic_kindai2_2.jpg pic_kindai2.jpg

菱田春草 「落葉」 永青文庫美術館蔵


そういえば、牛肉や蛤に
生姜を加えて煮た佃煮を
「時雨煮」と呼びますが、あれは
佃煮を口の中に入れると
いろんな風味が次々と
湧き起っては舌の上を通り過ぎてゆくことから
時雨が通り雨のように降る様子になぞらえたことに由来して
芭蕉の門弟の俳人、各務支考が名付けたそうです。
食べ物の味の変化を
気象になぞらえるような感性は
現代人は持ち合わせていないように思えます。


中国の宣明暦では「天気上勝地気下降」、
天地の寒暖が逆になる日、とあります。
そういえば、冬に農家さん達が
地面を少し掘り下げて
にんじんや大根、ねぎ、白菜など入れ、
上を藁やムシロで覆って保存なさっているのを見たことがあります。
温度も湿度も地上に比べると安定していて
長期保存に向いているのでしょう。
温かいという言葉には程遠く見える土の
地面の下のぬくもりを想像しつつ
落ち葉を踏んで歩く毎日です。


20161127_n3.jpg

花: やぶ椿 美男蔓
器: 信楽 作家名不明


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4 Comments

式田香甫  

古義堂の近くに「皆川其園(其にサンズイ付き)の屋敷跡があり 保存会が月釜をなさっています 今月は炉開きで 菓子席のお軸は「吉田兼好」の消息でした 貴女様なら喜ばれそうな趣向が多々あります
 kouza@kodo-kan.com

2016/12/01 (Thu) 22:03 | EDIT | REPLY |   

えるて  

式田香甫 さま

こんにちわ

ご案内をありがとうございます。

極月のお軸は消息ですが、
侘びも極まると
花合わせは難しいですね。

2016/12/03 (Sat) 13:20 | EDIT | REPLY |   

S氏  

藪椿の一輪に虫食いの葉、美男蔓の動きのある蔓
野趣あふれた素敵な作品ですね。
花器との合わせ方が絶妙です。
いつも素敵な作品をありがとうございます。

2016/12/09 (Fri) 07:09 | EDIT | REPLY |   

えるて  

S氏 さま


こちらこそ
いつも素敵な写真を拝見させて頂き
有難く存じます。
海の写真も棚田も夜景も
S氏さまの目というレンズを通すと
こんなふうになるのね…と
感慨深く拝見しております ^_^

この花は
ちょっとマスキュランかな、と
思ってます。
筋肉質な花です。

ちょっとばたばたしてて
コメントの御礼が遅れまして、失礼致しました

2016/12/12 (Mon) 03:23 | EDIT | REPLY |   

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