立冬 初候:山茶始開(つばきはじめてひらく)


花という漢字は、「はな」と発音します。

何を当たり前のことを、と
思われるかもしれませんが、
元々日本では、
お花に「はな」と発音する名前が
ついていたわけではなかったようです。

いや、正確に言うと
お花を意味する
固有の単語がなかったようなのです。


「はな」という音を持つ漢字を羅列してみると、
一つの法則に気が付きます。





放つ
離す
話す


口から出た言葉は
自分の身から離れてゆきます。
何かを放っても
自分の身から離れてゆきます。

端は真ん中ではなく「はしっこ」ですし、
鼻も体の先っぽのとんがった部分ですし、
塙は山が突き出た箇所・小高い所という意味です。

「はな」という音には
まんまん中というよりも
遠いところに離れ向かってゆく
なにがしかの意味を感じます。

では「花」は、というと
多くは枝や草の先っぽに咲きます。

このことが、
花を「はな」と発音することと
無関係だとは思えません。

花の咲く部分が
つぼみになり、花が咲き、種が実るように変化することを
くさかんむりに化けると書いて「花」とした
中国人の感覚とは
余りに違い過ぎて、
擦り合わせは
大変な作業だっただろうなぁと思います。

もっとも、花を「はな」と発音するには
いろんな説があって、
花が開くという意味で「放す」から来たという説や
「春成る」から「はな」となったという説、
その他さまざまあります。

いずれにせよ、
文字というものがなかった日本に
漢字が輸入されたことにより、
その文字一つ一つが
何を意味するのかを知って、
その当時の日本の言葉の音をあてがうことが
行われたわけです。

中国の文字の「花」の意味するところは
日本人が「ハナ」と言ってる内容に近いので
この漢字に
この音を当てましょう、と
訓読みが出来たのでしょう。

漢字が入って来たことで
日本語は再構築されました。
それまでと、何かの感覚が根本的に変わってしまったのか、
そして何が変わらないで残ったのか。
そういうことを想像すると
ちょっとドキドキします。

そして実際の花々については
中国にはあっても日本にはない植物、
その逆に
日本固有種で中国にはない植物も
あったでしょうから
中国の書物に出てくる漢字を
日本の野生植物に
ひとつひとつあてはめる作業は
大変なことだったろうと思います。


つばきは古事記や日本書記にも登場し、
古くは「海石榴」と書きましたが
これは山茶花のことで、
椿と姿が似ているためか
当時は混同されていたようです。

そして
中国での名前の「山茶花(サザンカ)」は
ツバキ類一般を指す「山茶」に由来し、
山茶花のもともとの詠み方の「サンサカ」から
なまって「サザンカ」と言われるに至ったと言われています。
江戸期の文献に「茶山花」と書いたものもあり
書き間違えかもしれないのですが
こちらの方が心情的には「サザンカ」と読みやすいですね。

このようなことからも
「山茶」と書いて「つばき」と読ませる
暦に表れているのでしょうから
小さな発見は限りがありません。

ツバキはというと
春に花が咲くことから
木偏に春の文字を日本で組み合わせた
国産の漢字が使われるようになったと考えられています。

立春:初候 東風氷解

中国には「椿」という文字があるのですが、
別の花をさすことから
そのように類推されるそうです。


文字の歴史を紐解くことで
花への意識や
日本の歴史も垣間見え、
いろんなことがいろんなところでつながって
名前一つ、成立しているんだなぁと
しみじみ思います。


サザンカですが、
野生の物は白の一重で
紅い物はないんだそうです。
今私達が町や生垣で見かけるサザンカの
殆どが園芸種であるため、
濃い桃色や八重の
にぎにぎしい印象で
私は余り手に取ることがないのですが、
萩の指月山が北限と言われている
野生種の白いサザンカは
はたしてどんな佇まいなのでしょうか。


20161107.jpg


花: 椿(嵯峨初嵐) 宝鐸草 末枯れ蔓
器: 置筒竹花入 



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