寒露 次候:菊花開(きくのはなひらく)


随分前のことですが、
西欧の人達の
菊の花への感覚が
日本人と著しく違うことに
はっとしたことがあります。

ニューヨークにせよ、
バルセロナにせよ、
フィレンツェにせよ、
多くの街では
街路樹の足元やプランターなどに
飾り植えられている花の数が
東京に比べて
段違いに多いと感じるのですが、
それが今の季節は「菊尽くし」だったりします。
街灯にぶら下がっているハンギイングバスケットに数種類の菊、
大きな植木鉢にこんもりと半球型に寄せ植えられているポンポンマム。

栽培されている多くの菊が
お仏花やイケバナに使われている日本に比べると
感覚が自由なせいもあるからか、
カジュアルに街中にあふれる色とりどりの菊に驚き、
また自分の中にある固定観念を認識して
なるほどなぁと
改めて自分を知ることになりました。

日本の国花でもある菊ですが、
万葉集に菊を詠んだ句が一つもないことからもわかるように
日本原産の植物ではなく、
奈良時代の中頃から平安初期に
遣唐使によって中国からもたらされたそうです。
後鳥羽上皇が身の回りの物に
おしるしとして施したことに発して
天皇および皇室の紋に使われるに至りました。

菊は、大きくは
栽培種のイエギクと在来種のノギクに分かれますが、
我が家の近所では
まだ菊はつぼみがわずかに開き始めたばかりで
存在感を発揮していません。
里山ではヨメナにシロヤマギクにユウガギク、と
ノギクはとっくの昔に盛りを迎えています。

「菊花開」の菊は、
どちらの菊を指しているのでしょうか。

私にとって菊は
イエギクにしろノギクにしろ、
好きな方向に伸びた奔放さが
魅力の在り処です。

そしてなによりも、香り。

いわゆる「お花のよい香り」とは少し系統が違って、
針葉樹のような、
良い墨を擦った時のような、
松脂のような。

空気が浄化され、
ぎゅっと引き締まるような。

この香りこそが「高貴」と言われる所以で
深呼吸したくなってしまいます。

しかし、住環境も衣類や食の在り方も
昔とはガラリと違う今、
香りへの感覚は
はたして変化してはいないのだろうか?…
と考えてしまいます。

菊を、高貴な香りだと、感じられますか?



20161012.jpg


花: 野葡萄 ガマズミ 芦 菊 
器: 唐物写脛当手付花籠 竹良斎



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2 Comments

おはな  

こんばんは

甘くない、媚びない香り、高貴な感じがします。
すれ違った人にあの香がしたら、とても印象に残りそうですね。

以前から興味があるのですが、
菊の節句の「被綿」ってどのようにするのでしょうか。

私も、菊は奔放な様が大好きです。
種類にこだわらず、残り枝をいただいてきて、
狭い畑に、挿し木をして栽培しています。
風に倒れ、曲がっても上を向いて咲く姿は、
高貴な姫ではなく、健気な里の娘に見えます。
今年も、もうすぐ咲きそうです。

2016/10/17 (Mon) 00:31 | EDIT | REPLY |   

えるて  

おはな さま

こんにちわ ^_^

菊についての感覚は
能の「菊慈童」などが上手に表していると思うのですが、
仙人など
不老長寿を連想するような
人にあらざる香りのようにも思われます。


> 以前から興味があるのですが、
> 菊の節句の「被綿」ってどのようにするのでしょうか。

こちらをどうぞ

wiki 「菊の着綿」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%8A%E3%81%AE%E7%9D%80%E7%B6%BF


2016/10/18 (Tue) 01:43 | EDIT | REPLY |   

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