白露 初候:草露白(くさのつゆしろし)


白露(しらつゆ)に 風の吹きしく 秋の野は
   つらぬき留めぬ 玉ぞ散りける

        「後撰集」 文屋朝康

歌の情景を想像すると、
ぶんやのあさやすは
なんと詩的な人なのだろう…と
ため息が出ます。

白露とは、
朝晩が涼しくなってきた頃
空気中の水蒸気が冷やされて水滴になり、
草花などの表面に降りた露のことを言います。

その白露を玉、つまり真珠に見立てて、
野に風が吹き付けると
草花の上にぽちりと乗っていた露が
散り散りに吹き飛ばされ、
糸でつないでいない真珠が
さながら散ってゆくようだ、と詠んでいます。

ただ真珠がころがり散っていくのではなく、
わざわざ「糸につないで留めていない」と言い置くところに
一瞬の見えない糸を感じ、
その風が野分の嵐の最中であろうとも
映画を見ているかのような
ある種、静謐な空間に思えてしまいます。

そういえば大工さんに
シーリングファンの色を銀色に塗って欲しい旨お願いした際、
「銀ですか!」と一瞬驚かれました。
けれどすぐさま
「壁や天井が漆喰の真っ白ですから
同じですよね」と言われて
「同じ?あぁそうか…」
と納得したことがあります。
白も、銀も、そして透明も、
色と光の区分からすれば
何色と特定をしないような仲間の扱いなのです。


「白」という漢字は、
白川静氏の著書によると
しゃれこうべの形と色を表すそうです。

それゆえか白という色は
死と再生の象徴でもありました。

夜から朝へと、空が明るくなっていく状態を
「しらむ」と言うのは、
夜が死の象徴であるのに対し
夜明けに再生の希望を感じたからではないかと思いますし、
今では珍しいとは思いますが
むかし、葬儀の際の
親族の喪服は白でした。

武士の切腹の際の白装束は
潔白とともに、
あの世への旅立ちという意味も含まれていたようです。

花嫁の衣装が真っ白なのも
純潔を示すとともに、
いままでの自分は死に(断ち切り)
嫁いだ家で生まれ直して生きていくという意味でもありました。

今の時代よりも
色自体が持つ意味に幅が広く
重かったのだな、と思います。

そして陰陽五行説では
秋は「白」の季節です。
里山の木陰で
緑の葉に黄色く紅葉をみとめる頃になると、
光の加減で
そこが白く抜けて見えることがあり、
空気の透明感が強まったことを感じます。

それでも都会にいると
夏から秋にかけては
暦が先走っているように感じますが、
雨の日の夕方の思いがけない暗さに
着実に秋が来ていることを感じるこの頃です。


20160907_n2.jpg

花: 山芍薬 雌日柴 金水引 紫式部 杜鵑草
器: 鵜籠

関連記事
スポンサーサイト



2 Comments

さと由季  

ともすると 現実逃避しがちな ナマケ者の私、えるて様のふろブログを 毎朝 拝見いたし、襟を正し、1日の始まりとさせていただいております。貴重な文献を やさしく紐解いてくださり 感謝でございます。

季節の移ろいを それとなく知らせてくれる
花の風情に 感動でございます。

2016/09/09 (Fri) 10:52 | EDIT | REPLY |   

えるて  

さと由季 さま


ひゃ~ ご丁寧に恐れ入ります >_<

わたくし自身若輩者で
到らない所も多々あるかと存じますが、
何かちょっとでもお役に立てていたり
楽しんで頂ければ
幸いに存じます ^_^

2016/09/11 (Sun) 00:32 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment

←お返事は基本当ブログ内で致します。ご面倒をお掛けしますが再度お越し下さい