立秋 次候:寒蝉鳴(ひぐらしなく)


子供の頃から強い日差しが苦手で
夏休みだからと言って
外を駆け回ることには
縁がありませんでした。

暑いとは言っても、
照りつける残暑の中、
アブラゼミがジィジィ鳴いて
つくつくほーしの鳴き声が徐々に弱まって
急に暗くなったかと思うと、
ざーっと夕立が降り付けて涼風が吹くようなことも
今より多かったように思います。

そして再びお日さまが出て、
障子が夕陽を浴びて
だいだい色に光る頃、
示し合わせたように始まる
遠くに響くようなカナカナという蜩の鳴き声を聞く夕暮れ時は、
私にとっての
好ましい夏の時間でした。

今も蜩の声を夏の終わりに聞くと
瞬時に子供の頃に引き戻されるような思いがします。

そういえば最近のことなのですが、
夜、食事などした帰り道に
もうすぐ日付が変わるような時間だというのに
都心の公園近くでアブラゼミのような蝉の鳴き声がして
とても驚きました。
街燈のせいで昼と勘違いしているのでしょうか。
それとも夜鳴く種類のセミがいるのでしょうか。


牛亭問蟬

問   「蟬曰齊女、何也?」
答曰 「昔齊后忿而死。屍變為蟬。登庭樹、嘒唳而鳴。王悔恨。故世名蟬為齊女焉。」

     馬縞「中華古今注」


質問 なぜセミのことを「斎の女(妻)」というのですか?
答  昔、斎の国のお妃は、王と仲違いをして
   恨んだまま亡くなってしまいました。
   その亡骸は蝉へと変化し生まれ変わり、
   庭の樹木に登って
   嘒唳(けいれい)として鳴きました。
   その声を聞き、王はお妃との諍いを大いに後悔しました。
   それ故世間で蝉のことを「斉女」と言うようになったのです。

私の勝手な想像ですが、
アブラゼミやクマゼミの日中の元気な鳴き声では
王様は後悔に至られないように思うのです。
夕暮れ時にカナカナと鳴く蜩でないと、
記憶を引きずり出されるような思いになったり
心に響くことはないような、
そんな気がします。


20160812.jpg

花: 蓮 松
器: 萩 納富晋

松を斉王に、蓮を斉女に見立ててみました

関連記事
スポンサーサイト

4 Comments

式田香甫  

No title

涼風を感じる作品ですね

2016/08/13 (Sat) 08:33 | EDIT | REPLY |   

えるて  

式田香甫 さま

気持ちよく感じて頂ければ幸いです


「作品」と仰って頂くと、こそばゆいです (>_<)

料理も花も諸々の家事も
生活に即して
そこから離れることはなく、
「今日のおそうめんは、夏らしい良い作品だね」
と言われているような
そんな気恥ずかしさがあります。

2016/08/13 (Sat) 13:04 | EDIT | REPLY |   

hippopon  

No title

こんにちは

旅枕の写しに活けたくなりました。
松、いいですねぇ~。
なかなかこういう風にならなくて、
一陣の南風が蓮池を抜けて 松籟を呼ぶ風情
床の間をいつまでも眺めていそうです。

いつもうれしく拝見いてます。

2016/08/13 (Sat) 16:30 | EDIT | REPLY |   

えるて  

hippopon  さま

こんにちわ
お気に召して幸いです ^_^

実はこれ、微妙な作為を
たくさんたくさん施しています。

松の枝の動きを殺している葉っぱを全て除いて、
枝を微妙にためたり、
足元を潰したり、少し曲げたり。

はじめは竹の寸胴に入れ、
そして唐胴の尊型瓶子に入れなおし、
そしてこの萩に落ち着きました。

実は、長い旅路の果てなのです…


そして、わたくしも
いつも楽しく拝見しています。
フレンチなど
私も好きで参りますので
機会があれば、
書いてみようと思っています。

2016/08/13 (Sat) 23:49 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment

←お返事は基本当ブログ内で致します。ご面倒をお掛けしますが再度お越し下さい