大暑 初候:桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)


聖木とか神木は
どんな考えの元に定まったのだろう…と
常々思っておりました。

樹齢が何百年、何千年というような
特別な木は
単体でのことなので
わかりやすいのですが、
たとえば「桐」の木の
樹種自体が
神聖な木として
伝統的に尊ばれて来たのは
どういう理由があるのかな、と。

皇室には
「菊」と「桐」の御紋が2つります。

「菊」は奈良時代に邪気払いの薬として輸入されました。
花の形が太陽に似ていることから、
天照大神(日輪)信仰と結びつき、
天皇制の象徴にも合致を見たのかもしれません。
平安時代末期から鎌倉初期にかけて
後鳥羽上皇が菊を好まれ菊紋を多様なさって以来
代々天皇家にて受け継がれて、
皇室の御紋となりました。

そして「桐」は
中国の古い思想において
聖天子の出現の際に現れる瑞鳥「鳳凰」の宿り木であるとして、
聖樹とみなされたそうです。
その思想が輸入され、
皇室に根付いたようです。

花札には「桐に鳳凰」の札がありますね。

日本では平安時代初期、
嵯峨天皇の御召し物に「桐」が描かれたことが確認されています。
その後も足利尊氏や豊臣秀吉など天下人が
天皇から紋を下賜されたことによって、
政権担当者の用いる装飾紋章と言う認識が広まり、
現代においても、内閣総理大臣を始め
諸機関が紋章に用いています。

この皇室の2つの紋は
その成立の過程からも
「菊」紋はどちらかというと皇室の私的な紋章であり、
私的であるがゆえに定紋的な性格が強く、
かわって「桐」紋は政府機関の紋章としての
代替紋的な性格を持っています。

鳳凰は、竜と同じく
実在はしない伝説の生き物です。
しかし、もし鳳凰が存在し現れたとしたら
桐を宿り木にするだろうと、
何故古代の人は思ったのでしょうか。

桐と言う木は、
樹木としては、成長がものすごく速いのです。
昔は、女の子が生まれたら桐を植え
お嫁に行く時には
その桐で箪笥を作って持たせた、
という程成長が早いのです。

若い木は、大人の上半身が隠れる程の
大きな葉をつけます。

鳳凰は、朝日を浴びた桐の葉の
光の照り返しで目覚めるとされていました。

近所のアパートの
塀と階段の間のわずかな土地に
桐の幼木があっという間に伸びあがって
大きな葉をつけているのですが、
大家さんがお近くにいらっしゃらないのか
そのまま放置されていて、
人様の家のことながら
通り掛かるたびに気になります。

この「速さ」に
人は特別な何かを感じ取ったのかもしれません。

そういえば四君子や松竹梅の
「竹」も、とても成長が早いです。
伊勢の神官のお召し物になる麻も、
今は禁制の植物なので滅多に目にすることはありませんが
ものすごく成長が早いのだそうです。

早い成長は強い生命力の表れです。
現代とは比べ物にならない程
致死率が高く寿命の短かった時代、
その生命力に祈りや願いが託されたとしても
なんら違和感がなく、
それを聖なる植物とみなしたことは
とても自然なことのように思えました。

桐は、木材としては
伸縮や割れ、裂れなどのくるいが少なく、
吸湿し難く、
国産材としては、もっとも軽い木材です。
材としては雪や雨にさらすことで白くなり、
その色は清浄さに繋がると感じます。

藤の花が咲くころ
桐の花も咲きます。
高貴な香りが遠くまで漂います。

大抵は
高いところに咲くので
花も実も切ることも叶いませんが、
橋の上に顔を出していたので
一枝頂きました。

この印象的な形の実であるにもかかわらず
実用的な使い道はなさそうです。

20160722.jpg

花: 桐の実 昼顔 梅の古木 撫子
器: 明官窯染付白抜紋偏壷写 

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2 Comments

えざき  

お礼

いつも楽しみに記事を拝見しています。
また最近は花を留めることについて細かく説明があるので大変参考になります。
ありがとうございます。

菊と桐について知らない事ばかりで自身の勉強不足を自覚いたしました。
この年齢になりましても新しいこてを知るのは新鮮な喜びです(^_^)

茶の湯をたしなんでいますので、茶花を入れる事も多いのですが、花入は、口が小さいものを選んでしまいます。
花留めを伝授頂いて、今後は他の花入にも挑戦したいと思います。

2016/07/28 (Thu) 07:36 | EDIT | REPLY |   

えるて  

えざきさま


ご丁寧に恐れ入ります ^_^


言葉や写真での説明は
えてして
本質を伝えられない可能性があるので
連日試行錯誤しております。

少しでもご参考になれば幸いです。


茶花にせよ、
花は本当は
まずは広口の器から始められる方が
よろしいのです。

細口の器は
本来、
大きな世界を凝縮であり、
一番の見どころを摘み取った、
オイシイ所のフォーカスです。

機会がおありでしたら
是非広口の器も
お楽しみ下さい ^_^


2016/07/28 (Thu) 23:55 | EDIT | REPLY |   

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