冬至 末候:雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)

日々の慌ただしさに忙殺され、秋に蒔かれた麦が新芽を伸ばしていることなぞすっかり忘れておりました。年末の忙しい最中だけれど麦の新芽を摘みに行きたいと5月にライ麦をくれた友人に相談したところ、「今の時期は穂が出ていないし丈も低いから雑草と見分けがつかない感じだけれど、それでも良いのかしら?」と言われ、はたと考え込んでしまいました。雪の下に生えていてこそ、麦の新芽も冬ならではの風情ですが、年の変わり目の...

八寸

家で行事があると、怒涛のごとくお客様がいらっしゃり、その為の酒の肴やお食事を作るバタバタに子供の頃から巻き込まれて育ちました。なので、私のお料理は実用本位。可愛げなぞ、全っくありません。菜箸でちまちま混ぜるよりは素手が一番の混ぜ道具計り道具。瓶の注ぎ口の指の塞ぎ具合でぴっぴっとお醤油を測るような按配です。育った環境の影響かはわからないのですが、実家を出た今も時々大人数のお客様をお招きすることがあり...

冬至 次候:麋角解(さわしかのつのおつる)

サワシカという鹿の名前を初めて知りました。それ故、日本のどこに生息しているのか知りたくて、検索すれどもすれどもその片鱗が出てきません。そもそも「麋」という漢字(「鹿」の下に「米」)がサワシカと打っても変換されて出てこないのです。それもそのはず。大漢語林をひっくり返してようやくわかったことには、この漢字には訓読みが存在しないのです。大鹿とか馴鹿とか呼ばれるこの鹿は北米大陸の北のほうではムースと呼ばれ...

冬至 初候:乃東生(なつかれくさしょうず)

冬至は、旧暦(太陽太陰暦)において暦を計算する起点となる日です。太陽の力が一番弱まる「陰の極み」の日であり、この日を境にして太陽が生まれ変わり再び力を取り戻して「陽」の力が蘇ってくる日と考えられ、このことを「一陽来復」と言います。暦を計算する起点、というと新暦で生活している者にとってはそれがまるで大晦日とお正月の境目であるかのごとく一瞬錯覚してしまいますが、あくまで計算の基準日なだけです。この日を...

大雪 末候:鱖魚群(さけのうおむらがる)

毎年9月になると鮭の遡上が始まり、東京のお魚屋さんにも生すじこが並びはじめます。はしりの頃は高価で、卵も未熟な感じですが、月末頃には思うような物が思うような値段で出回り始めるのでよし!と頃合いを決めてまとめて買い、塩漬けと醤油漬けのいくらを仕込んで方々に配ります。冬から夏まで出回っているイクラは必然的に、冷凍物です。若干、食感がねっちりとします。自家製イクラはコクと旨味のわりに意外な程あっさりはら...

俵屋さんのみかんゼリー

いまの時期、京都の俵屋旅館に宿泊するとお夕飯後の水菓子に温州みかんのゼリーが出されます。初めて頂いた時は、京都でいちばんの旅館があまりにも普通過ぎる素材をデザートに用い、それも普通でない美味しさに仕上げていらっしゃることにびっくりしました。2回目に頂いた時はその作り方をぐるぐる想像しました。ゼリーを作るにはゲル化させるために寒天とかアガーとかゼラチンを使用します。食感も固まる温度もそれぞれ違います...

大雪 次候:熊蟄穴(くまあなにこもる)

「蟄」という文字は虫や獣が土の中に隠れ、閉じこもることを意味します。物皆静まり返り食料となる物も激減する厳冬期。「活動しても効率的ではないから、さぁ、冬の間は死んでいるかのように休眠しましょう!」その動物がそんなふうに決めたところで突然そのような体質にはなれません。意思の力では、体温を外気温近くまで下げることはできないし、無呼吸に近い程心拍数を落として代謝を抑えることも出来ません。体を作る全ての細...

大雪 初候:閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)

梅雨明け間もない頃台北からの帰路だったか、飛行機から「台風の目」が確認できて興奮したことがあります。普段、天気予報図で見知ってはいるものの、自分の目で見るとその大きさに改めて驚きました。砂糖を入れてきめ細かく泡立てた卵白に泡立て器のスジの跡がうず巻きに残っているかのような濃密で大きな雲の渦です。小さな怒りを寄せて集めたかのようにぽこぽこと小爆発している部分もあり、みるみるうちに遠ざかってゆく飛行機...

小雪 末候:橘始黄(たちばなはじめてきばむ)

季節外れの話題で恐縮ですが、お雛様を飾る時ひな壇に向かって右には 「左近の桜(さこんのさくら)」の木を。向かって左には 「右近の橘(うこんのたちばな)」の木を合わせ置きます。お雛様の飾りつけの際に「これは、桜。 こっちは…みかん?」などと子供の頃言っていたあれは橘(たちばな)と呼ばれる柑橘です。これはお雛様が、京都御所の紫宸殿を模した作りであることに由来します。御殿の前には桜と橘の木が植えられてい...