小満 末候: 麦秋至(むぎのときいたる)

石原吉郎 「麦」いっぽんのその麦を すべて苛酷な日のための その証しとしなさい植物であるまえに 炎であったから穀物であるまえに 勇気であったから上昇であるまえに 決意であったからそうしてなによりも 収穫であるまえに 祈りであったから天のほか ついに 指すものをもたぬ 無数の矢を つがえたままで ひきとめている信じられないほどの しずかな茎を 風が耐える位置で記憶しなさい     ***麦秋と書いて「むぎのとき」...

花の死体

ある時、知人宅を訪問した際娘さんがぼそりと呟きました。「お花なんて。花の死体を並べて何が嬉しいんだろう」ぎょっとしました。彼女のお母様はフラワーアレンジメントのお仕事をなさってて、大きな仕事も請け負っていらっしゃると聞いています。彼女が小さな時からお母様はきっと仕事がお忙しかったのでしょう。山と積まれた美しい花々を相手に立ち動く母親の姿を目にする幼い彼女の姿がいとも簡単に想像出来ました。花一つ取っ...

コーヒーの焙煎

私は、どういうわけだかコーヒーを飲むと気持ち悪くなることが多いのです。吐き気がするな…と思うと数時間前に出先でコーヒーを頂いた、なんてこと、よくあります。お茶は、日本茶も紅茶も烏龍茶もよく頂きますし、抹茶でさえも、お薄を3杯以上頂いてもへえちゃらです。コーヒーの何かが合わないのだな…とずっと思っていました。それが、大人になってちゃんと入れたコーヒーを飲んで「美味しい」と思い、同時に気持ち悪くなる理由...

玄関の花

久しぶりに、花屋に行きました。通常は我が家の小さな庭や山里の物を採取してきて使うので、花屋さんで買うことは稀です。行くとしても、和の花を扱っているほんの数店舗…切り花なら、日赤通りの花長さん、表参道の風庵さん、とても稀に、銀座の野の花司さん。鉢物や苗なら、日本橋三越本店の屋上。東京で山野草が手に入るといえば上記4店が有名どころです。そういえば数週間、山に行っていません。庭の花も手薄です。そんなふうな...

わかるとか、わからないではなく

先日、骨董屋の方と世間話をしていたら、とある方を評して「あの方は、お花はわかりませんから」と仰いました。何か、引っ掛かります。花が、わかる?その「花がわからない」と一刀両断された方は何十万円とか何百万円とかで売買される作品を生み出すゲイジュツカです。わたしも「素敵だなぁ」と個展を拝見しています。たとえば、花が器に入っていると仮定します。それがどんなにきれいでステキでも、花自体に興味がなくてその素敵...

小満 次候: 紅花栄(べにばなさかう)

紅花は、瀟洒なお庭よりも一面見渡す限りの畑で育てられているようなそんなイメージが強い花です。エジプトが原産と言われているこの花は古くから染料としてシルクロードを伝わって日本に入ってきました。卑弥呼の頃とも、聖徳太子の頃とも言われています。源氏物語の登場人物としては朴訥なお人柄が魅力の寵姫「末摘花」はお鼻が赤かったことに由来して、ベニバナの雅名は「末摘花」です。確かに紅花は赤の染料として筆頭ではある...

雑草考 その2

雑草、とかそのへんに咲いている花、とか路傍の草花を指して人は言います。庭のお掃除の際に「その雑草抜いて」などと言う時は抵抗なく口にするのですが、人は勝手なもので、その雑草をいざ器に入れようと望む際にはこのような呼称にどうも引っかかりを感じます。どこにでも咲いている花も器に入れるとそれなりに見えますね、などと言われると全く喜べないのです。そのへんの草って、なんだろう。ぺんぺん草も牡丹も、花であること...

雑草考

和辻哲郎は 著書「風土」の中で「ヨーロッパには雑草が生えていない」と書いています。意味がわからないなと高校生の当時は思い、そのまま忘れてしまっていましたが、5月のドイツの街道を連日車窓から眺めていた際、突然、荷風の言葉が脳裏に浮かびました。確かに、日本のようには雑草が生い茂っていないのです。お手入れをしているようにも見えません。連綿と続く畑も牧草地も敷地境に植えられている針葉樹の並木も、開墾され一...

スケッチのすすめ

投げ入れの花や茶花の写真集を拝見する際に心に留まった作品がある場合はスケッチをしてみることをお勧めします。スケッチが上手いとか下手とかそういうことは関係なく、描こうとすれば花と器の寸法の対比などしみじみと見る、そのことが良いのです。一本の草花の葉の付き方や花の向き、どのように他の草を添わせてあるかなど丁寧に見なければスケッチ一つ描けません。それによって、達人の寸法感覚を身の内に取り込むことができま...

オレンジ

数年前、お手土産にオレンジのシロップ煮を頂戴しました。瓶の中にお行儀良く4mm程にスライスされたオレンジが重ねられていました。シロップにとろみがようやくついた程度のあっさりした甘さで、トーストに無塩バターを塗ってその上に一枚ぺろんと置いて頂くと生のオレンジとも、ジャムのオレンジとも違うなんとも言えない美味しさでした。紅茶に一枚入れても素敵な香りのオレンジティーになります。自分でも購入しようと調べたと...