土筆

山菜のシーズン到来でうずうずわくわく。春一番のフキノトウから始まってコシアブラやコゴミやタラの芽など、機会がある度にせっせと頂きます。そういえば、人様に頂いた手作りの品でいままで一番感動したのは、つくしの佃煮です。その一瓶にどれだけのお手間が掛かっていることか。腰を曲げて一つ一つ摘み、指先をアクで黒く染めながらはかまを取り、スーパーの袋に半分程の一抱えのつくしから出来る佃煮はジャム瓶一本程度です。...

春分 末候:雷乃発声(かみなりすなわち こえをはっす)

空の大空間に稲妻が光り雷が落ちるさまを初めて見たのは、NYでした。イーストリバーを眼下にクイーンズを遥かに望むその部屋は大きな窓ガラスがはめ殺しになっていました。お天気の良い日は川を行き交う船をぼ~っとのどかに見下ろしていましたが、夜の稲妻はまるで窓が映画館のスクリーンのように思える程非日常的な光景で、強烈な閃光とそれを追いかけて轟く音に、身動きできなかったことを覚えています。何も遮るものがない所で...

春のお弁当

友人が個展を開くので前日にお手伝いに伺いました。どのような個展でも同じでしょうが、その準備は水鳥の水面の下の水かきににてすさまじく体力も時間も気も使います。私よりひとまわり程年上のその方は、何か大きな力に導かれ熱に浮かされたかのように采配をしていて、還暦を迎えられたとは思えない程エネルギッシュでいつものことながら圧倒され、お手伝いに行ったはずなのに頂いて帰るパワーの方が大きくて、帰る道すがら頭の中...

春分 次候:櫻始開(さくら はじめてひらく)

桜の「さ」    はる(春)という言葉の「は」は、はら(原)、はらう(払う)、はれ(晴れ)、はるか(遥か)、はる(墾る)などの語幹と同じで、障害なく見通しがきくという意味だそうです。(大野晋 「古典基礎語辞典」より)冬籠りの季節が終わり、芽の張る(はる)春(はる)を迎える。一つ一つ意味のある音の連なりで言葉はできているんですね。桜という名前の語源には所説あるようですが、その中の一つに「さ」の神さまに起因...

幻の椿

戦後間もない頃。炭焼きのため山に入った人がとても美しいヤブツバキを見つけました。その椿には、白い覆輪のような縁取りがあります。五島列島のその町の名前から、「玉の浦」と名付けられました。数十年程時を経て品評会に出展されるや否や、その美しさのためあっという間に有名になりました。しかしそのために枝も根も多くの人に採取され、最後に原木は裸同然の姿で枯死してしまったそうです。その姿に惚れこんで庭に植えた椿の...

春分 初候:雀始巣(すずめ はじめてすくう)

うらうらに照れる春日(はるひ)に 雲雀(ひばり)あがり 心悲しも ひとりし思へば        大伴家持 万葉集  先日、扉を開け放ったお店のテラス席で雀が足元近くまで来ました。お客様のパンくずが自然に落ちるのを待つわけではなく、飛んだり跳ねたり靴にまで飛び乗ったりしてちゅんちゅんと催促。ひとかけ落としてやると一目散にくわえて走り(すずめって、走るんですね)食べ終わるとすぐさまちゅんちゅんぴーちく...

社日(春)

社日とは、春分・秋分にもっとも近い戊(つちのえ)の日で、生まれた土地の産土神(うぶすながみ)に参拝する日です。産土神さまは、その人が命を授かり、産まれ、亡くなった後までも守護の恩恵を授ける神様だそうです。移住をしたとしても一生を通じ守ってくれる神様で、初宮参りや七五三に参拝に行くのはこの産土神さまのお宮です。物言わぬ植物は芽を出し育つその土地から自由に動くことも叶わず土壌の恩恵に因る所が大きいので...

啓蟄 末候:菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

荘周の夢昔者荘周夢為胡蝶。栩栩然胡蝶也。自喩適志与。不知周也。俄然覚、則蘧蘧然周也。不知、周之夢為胡蝶与、胡蝶之夢為周与。周与胡蝶、則必有分矣。此之謂物化。訳かつて荘周は蝶になった夢を見た。蝶そのものを楽しんでいて、自分を人間とも思わなかった。目が覚めて、あぁ自分は人だったのだ…と驚いたがはたして夢から覚めた人としての自分が本物なのか。それとも蝶が人になった夢を見ているのか。形は違えども、主体とし...

啓蟄 次候:桃始笑(ももはじめてさく)

春の苑(その) 紅(くれない)にほふ 桃の花 下照る道に 出でたつ少女(おとめ) 万葉集 野暮ったいようで華やかで。 まっすぐ融通が利かないようで唐ぶる妖艶さがあり、邪気を払える程の強さを備え持つ。 桃は、こう見えてなかなか手ごわいのです。花: 桃 卜伴椿 菜の花器: 古銅砧形獅子耳花生 「杵のをれ」写...

啓蟄 初候:蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)

野山を歩いていると、繭のついた枝を見つけることがあります。サンゴミズキの赤い枝に、網の目のようなクスサンの繭。コナラの木に、鮮やかなライムグリーンのウスタビガの繭。クヌギの枝に、黄緑色のテンサンの繭。たいていは葉っぱの落ちた冬の落葉樹の林で見つけるため、繭には穴が空き、既にからっぽです。なので、おかいこさんの繭の中での粛々した営みに気遣うことなくこれも枝の景色のうちと手折って持ち帰るのですが、さな...