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赤ピーマンのムース

パリのマレ地区、ヴォージュ広場にある「ランブロワジー」を訪れたのはもう20年も前のことです。フランス語は挨拶程度しかわからないかので、行先の住所を記した付箋を家族はいつも用意しており、タクシーに乗る際は運転手の方にそれを渡していました。その日もコンコルド広場のホテルの前でタクシーの後部座席に乗り込むと、運転手さんに紙を渡しました。はいはい、と気軽に受け取った運転手さんは明かりをつけて住所を確認するな...

心眼で見る線 ④

次に花の方から見てみます。花が入ったまま、落としを器から出してみました。ガラスビンの中に注目してみて下さい。何本もの枝がクロスしている場所が見えるかと思います。意識してここで交わらせているわけではありませんが花が入り終わった後にこのような形になることはしばしばあります。扇でいうところの「かなめ」にあたるのかな、と思います。花を入れる際、器にどのように入れていくか算段をする際に、実はこの「かなめ」の...

心眼で見る線 ③

以下の写真をご覧ください。両方同じ花(トサミズキと藪椿と梶苺)が入っています。さっとなげいれただけの花で、落としごと花を器から器に移してみたのですが、どちらの方が良いですか?花を見て「気持ち良い」と感じる理由を言葉に表すのは簡単ではなく、なおかつ言葉にする過程で消えてしまう何かがあるため、分析することにためらいがあります。分析すれば、その結果は流派いけばなでいうところの「型」にあたるような位置にあ...

心眼で見る線 ②

何も考えずに器の中に花を入れることはとても簡単です。器の口に花をぽんと差し込んで自然に草木が留まるところで手を放すだけです。留まり所がなければ、草木の足元は器の底まで達するのみです。その状態で花は、美しく入っているでしょうか。そして器や花の延長線を想像したとしたら、どんな線描が描かれているでしょうか。正直、何も考えずに投げいれた姿が美しければ良いのになぁ、と思います。いじり倒していないのである種の...

瓢亭卵

本日は上巳の節句、お雛祭りです。ちょっとした前菜に重宝するのが京都瓢亭の名物、瓢亭卵です。なんてことはない半熟卵なのですが、これがなんてことなくはなくて、召し上がった方皆さんどうやって茹でるのかお聞きになります。私も始めて頂いた時は、絶妙だ、と感心しました。京都の南禅寺のお店には何度か伺いましたが、始めては京都ではなく、渋谷のパルコの上の支店でした。今はもうなくなってしまいましたが窓の外には小さな...

心眼で見る線 ①

器と枝をぼんやりみていてふと、思いました。花を入れる際、そこに実体はないのだけれど眼には見えない線や交点などを知らず知らずのうちに意識しているのです。線が眼に見えない理由ですが、それは器のエッジの描く曲線の延長線であったりとある枝の先っぽの延長線と他の草の延長線の「交点」であったりとつまり、想像上の線で実体はないのです。しかし、その想像は妄想ではなく、実体のある器や植物の実線が仮に自然に延長して伸...

春は土物

気の早い春一番が吹き荒れはしたものの、三寒四温の名の通りまだまだ寒い日には厚手のコートが手放せません。昔から、春一番は嬉しい春の訪れの先駆けである反面、自然災害を引き起こす恐ろしさも秘めていました。強い南風故の海難事故や、突風による竜巻、急に温かくなることでの雪崩や融水による洪水などです。江戸末期の頃、壱岐の猟師達が漁に出ていた際、春一番の強風に煽られ船が転覆し50人以上の犠牲者が出るという悲しい...

あん肝

冬の時期、来客があるとしばしば「あん肝」を仕込みます。最寄りのスーパーでお取り扱いがない際は、お魚屋さんでお願いします。和食の際は日本酒で臭み取りをし、洋食の際は極甘口のデザート用白ワインに漬け、取り合わせのゼリーまで作ります。以下、略式の作り方です。まず、血管や血、薄皮を除きます。ピンセットを使用したり、太い血管は包丁の先で開いてしまうと良いと思います。あまり躍起になって行うとあん肝がボロボロに...

花の兄 ③

梅は、梅干しや梅酒などが伝統的な食品であることから、もっとも日本的な植物の一つだとお思いになる方も多いでしょう。しかし、花の咲いた枝を切りいざ器に入れようと意識的に向かい合うと、大陸の雰囲気の強い「唐ぶる」花なのだなぁ、と感じます。枝の角度にしても、ぎゅうっと力が溜まる元枝に対して小枝はさあっと力が逃がれ、孫枝はくくっと持ち上がって生えている、といった按配で、ぐっと屈曲したところに緩急がついてある...

花の兄 ②

「花の兄」など、梅の花に異名は多いのですが、謡曲の「老松」の一節にこのようなくだりがあります。  唐の帝のおん時は 国に文学さかんなれば 花の色を増し 匂い常より勝りたり 文学すたれば匂いもなく その色も深からず さてこそ文を好む木なりけりとて 梅をば『好文木』とは付けられたり実際には唐の帝の御代ではなく、時代をさかのぼること数百年晋の時代の哀帝の御代のことだそうですが、そういえば学問の神様菅原道...

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auther: えるて

  東京近郊の山里で採取した野の花や
都心の小さな庭の草木から
季節を切り取ります。
時折、食卓の話題や
日々のよしなしごとも。